世界への切符
本当はもっと色々書きたいことがあったんだけど、博論の最終提出が18日に迫っているのでなかなか後回しになってしまった。
ここ最近で一番心が弾んだこと1つだけ。
この2ヶ月で、私は毎日の習慣になったことが1つある。
それは英会話。最近よくある、スカイプのオンライン英会話を9月上旬に始めたのだ。
というのも、今私はカナダで研究者として英語で働くポストに挑戦中だから。
私は英語の苦手意識が高じるあまり、いいのか悪いのか別の言語(フランス語)に逃げて英語をずーーーーっと避けて続けてきた。もちろん、大学院の勉強では英語は必須なので読むのはできるけれども。
そして本気で研究者として生きていくことを決めてからは、語学力は研究者としての実力の1つと思い定め、常々努力はしてきたつもりだった。例えば自分の専門であるカナダのニュースを毎朝10分、化粧をしながら聞くとか。これはここ数年間やってることで、途切れ途切れだけどこの1年くらいはほぼ毎日続いている。
だけど、実際に使う機会はないから会話力だけはどうしてもあげる手立てがなかった。
英会話教室も通いたいと思っていたけれど高いし、即効性のあるものではないからコスパが悪いし。
どうしたものかなーと思っていた時にオンライン英会話の存在を知って、初めは少し躊躇していたんだけど、あるとき英語ができないことを思い知らされて一念発起した。
それは9月のある日、カナダ人の偉い先生を送迎する仕事が舞い込んできた時で、その日私は今までの自分からするとそこそこ話せたんだけど、でもそれは英語で働くにはあまりにお粗末なレベルだったのである。その先生を大使館にお連れした時、大使館の日本人スタッフは英語が流暢で、私は気の利いたことも言えず、話したいことも話せず、必要最低限のことを意思疎通させるのでいっぱいいっぱいで、「これからオタワで働きたいんだ」なんて口にするのもおこがましいような気持ちになったのだった。
それで、その悔しさや自分への怒りをバネにして、その日即大手オンライン英会話の体験レッスンを受講して(いい時代だ)、すぐに入会した。一ヶ月の携帯代レベルでとにかく安い。私のところは25分1レッスンを1日1回受講できるコースで月4000円代。
で。
その日から合計800分を迎えた一昨日。私は非常勤の勤務先でカナダ人を接待する機会がまた舞い込んできた。
自分でも驚いたことに、120人の学生を前にしてマイクで英語で話すことに緊張がなくなっていた。
そのあと接待の懇親会でも、英語で話し続けることに何の苦もなくなっていた。
そして英語を母語とするカナダ人にYour English is very wellといわれた。
二ヶ月前は話せなかったんだ、というと目を丸くしていた。
さらに、英会話レッスンを始めるきっかけとなった9月に大使館で知り合ったカナダ人外交官と奇しくも再会したのだが、上達したねと驚かれた。
そのオンライン英会話の回し者で、その宣伝をここでしたいわけでは全然ない。
でも、25分の朝の日課が私の人生をさらに豊かにしたのは間違いない。
今私は、海を気持ち良く泳いでるような、羽を持って空を飛んでいるような、そんな気分で英語で世界にアクセスできる。その実感を生まれて初めてもった。もちろん、まだ表現は下手くそだし、言えないことも多い。三単現のsとかも間違える。でも私がこれまで私の頭に詰め込んで吸収させてきた膨大な知識ーー英語だけでなく、研究活動を通じて育まれた知力ーーがあるからこそ、外国語で話したい話が無限に出てくるように感じる。そして、一番大事なことは、この知的興奮が刺激となって、もっと勉強したい、もっと知りたい、もっと話したいという飽くなき連鎖が生まれていることだ。
日本語だけでしかアクセスできなかったこの世界に
フランス語のレンズを通してみる世界と
英語のレンズを通してみる世界が加わった。
そして、フランス語のレンズも英語のレンズも、その言語圏が表象している世界の覇権、植民地主義の遺産を浮き彫りに見せてくれる。例えばアフリカには12億の人口がいるけれど、英語とフランス語を知っていればその12億人と友達になれる。そして、まだ見ぬ世界について教えてもらえる。
私はそれがこの上なく楽しい。
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