お願いもう少しだけ

毎日、充実すればするほど時間が手のひらからこぼれ落ちていく。


あと5日でカナダへ出発。激動の北米大陸へ。この時代のこの時期に北米大陸で政治に関わる仕事をすることはなんて巡り合わせなんだろう。間違いなく私の人生を変える経験が私を待っている。


でも、まるで新たな旅立ちを拒否するように、無理やり忘れようとするように、日本での「今、ここ」に集中している。毎日に呑まれているこの感覚。一人で静かに内省する時間もつくれないほど疲労の極限まで動き回ってくたくたになっているこの感覚。留学前は大抵そうだし、今回もまたそうなっている。


私にとっての日本でのリアルを心に焼き付けていくようなこの焦燥感を感じつつ、目の前の「今、ここ」の一瞬一瞬を噛み締める。


でも私にとっての「今、ここ」はあと5日で14時間のフライトを経て氷点下の雪国に瞬間移動する。


外国へ行くこと。実家も、最寄りの駅も、地元の町々も、電車も、ご飯も、この音も、匂いも、目に映る全てが様変わりすること。


未知の経験や新しい挑戦と引き換えに日本に置いていくものたちとの惜別までのタイムリミットが近づいている。もうすぐそこまで迫っている。


これから2年の間、異国の地で辛くなった時に今日を思い出して元気になるように。


神様もう少しだけ。

1秒でも長く、思い出を。



Lapin blanc et petites bestioles

"わたしたち、ここにいるわたしたちは、うさぎの毛の奥深くでうごめく蚤です。けれども哲学者たちは、大いなる手品師の全貌を目の当たりにしようと、細い毛をつたって這い上がろうとしてきたのでした" ーヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』

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