記憶すること、記録すること

更新久しぶり。

楽しかった夏もあっという間に過ぎ去りし日々となってしまい、オタワの街中は少しずつ色づいてきました。「夏のない年」と言われるほどの冷夏だったのにもかかわらず、ここにきて意外にも残暑厳しく、日中は29℃ほどまで上がっています。とはいえ、ジリジリと照りつける日差しはもうないし、日は驚くほど短くなったし、なによりメープルリーフが真っ赤に染まり始めていることから、季節は確実に厳しい冬に進みつつあるのだと実感します。



今週の月曜日。そう、まだ今週のことなのだけど、1ヶ月半にわたり滞在していた彼が日本に帰国してしまいました。彼の出発日は時間休をとって見送り、午後から出勤したのですが、あの空虚感と言ったらやるせなかった。



火曜日。朝目が覚めた時に隣に彼がいないこと、TVの音がしないこと(私はTVはあまりつけないけど、彼はTV好きでいつもつけていた)、「いってきます」や「ただいま」を返してくれる人がいないこと、ゴミが増えないこと、洗濯物が増えないこと、日常の些細なことが自分は一人に戻ったのだと突きつけてきた。


水曜日。日本に着いた彼からなんの音沙汰もなかったこともあって、一人でいることの意味やこれからの遠恋について考えていたら、なんだか「私はこの寂しさを引き受ける」という気持ちになり、急速に平気になっていった。はや笑。彼がいた日々は、まるで私の妄想だったんじゃないかという気にさえなってきた。それくらい、わずか三日前までの時間が夢のようで、あまりに現実からほど遠いキラキラとした幸せな時間だった。1ヶ月半の間、妄想の時間を過ごしていたのだと思って一人の部屋で夕飯を作る気力もわかずにダラダラと過ごしていたら、彼から愛情あふれる長文メールを着信した(2通)。


木曜日。久しぶりにLINEをした。「今から帰るね」「りょ」という事務連絡以外のやり取りが再開されて、また遠恋に戻ったのだと実感した。Skypeもした。話すことはなくて、だけど話し始めるとなんだか切れなくて、長電話になってしまった。一緒にいた時は、ふざけあって、いつも目の前のことが話題で、身のある深い話をする時間はほとんどなくなっていたのに、メールやSkypeになった途端、感じてることや考えたこと、少し恥ずかしいこととかも、どんどん伝えあえる。話す内容が、一緒にいる時と一緒にいない時で違うんだな、と実感した。つい言葉を尽くしてしまう私は、言葉を紡げば紡ぐほど言葉がぽろぽろと手のひらから零れ落ちていって、伝えたいことが思うように伝えられなかった。


金曜日。


この1ヶ月半が夢ではなく現実だったこと、確かに彼がここオタワにいたのだということ、一緒に時を刻んだのだということ、あの時あの瞬間、いろんなことを感じて、いろんなものが私たちの記憶に残っているのだということ。それは、思い出が遠ざかっていってしまっても、決してなかったことにはならないのだということ。感じたことを忘れてしまうことへの不安や恐怖が焦燥感が静かに芽生えて、どうにかして形に残したいと思うようになった。

二人で大量に撮った写真たちは、携帯もPCも容量オーバーで持て余し、すぐに見返すこともなくなってしまいそうだった。どの写真たちも、その目で見たものになにか心が動かされ、その目で見たそれを残したくて、そうしてシャッターを切っていたはずで、一枚一枚に物語があるのに、記憶の底に沈められてしまうことは耐え難いような気がした。


5000枚以上?もしかして1万枚?どれだけあるかわからない大量の写真たちを、一枚一枚厳選して、手に持てる形でアルバムにしようと思いついた。Photobackというサービスを見つけたので、それを使って、選んで、その時感じたこととか言葉に添えて、記憶を記録に残そうと。きっとそれは気が遠くなるほど手間のかかる作業で、面倒でもあるんだけど(容量オーバーのスマホとPCに写真を取り込む時点で面倒‥)、「残したい」って心から思うから。


人が、歴史を書いたり、物語を書いたり、絵を描いたり、写真を撮ったり、映画にしたりするのは、今私を突き動かしている、この「残したい」という強い思いと同じ動機なのだろうか。「残したい」って普遍的な感情の1つなのかもしれない。


ついては、このブログはほとんど誰も見ていないということを利用して、ブログをアルバムの下書きに時々使っていこうかなと思います。自分期限は3ヶ月で、年末に帰国するときに二人で同時に見ることができるのが目標。1冊のアルバムにするのは不可能な量だから、オタワ日常編とカナダ旅行編の2冊に分けて。彼が撮った写真と私が撮った写真を全部合わせて、選んでいく。サプライズも考えたけど、二人はそれぞれ違う感性を持ってるから選ぶ写真や添えたい言葉も違うと思って、やっぱり二人で作ることにした。とはいえ、実際の作業はこういうことが好きな私が主に担当することになると思う。笑


仕事と研究の合間にやっていきたいと思う。仕上がりが楽しみ!



Lapin blanc et petites bestioles

"わたしたち、ここにいるわたしたちは、うさぎの毛の奥深くでうごめく蚤です。けれども哲学者たちは、大いなる手品師の全貌を目の当たりにしようと、細い毛をつたって這い上がろうとしてきたのでした" ーヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』

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